2021/02/09 15:12
(店舗にて販売中の天然ケシのみ真珠)
小さな小さな弊店のアンティーク
ジュエリーを気にかけて下さって
いる皆様にいつも感謝の気持ちを
持って日々ジュエリーと向き合って
おります。
誠にありがとうございます。
さて、本日は誰もが一つは所有しているであろう、真珠についての
小さなお話しです。
「月のしずく」「人魚の涙」とも呼ばれ、古くから世界の人々を魅了してきた真珠。
他の宝石とは違い生まれたままの姿が宝石になるというのですから、それはそれは考えると凄い事ですよね。
ただ最近では低品質な養殖真珠が大量生産されるようになってしまい、
(初期の養殖パールは丁寧に作られてました。)
いたる所でパールジュエリーを目にするかと思いますが、その低品質がスタンダードとなってしまった今では残念ながら真珠は安いというイメージが強くなってしまっているようです。
また日本での一番の問題点はなんといっても養殖真珠に関しても、
「本真珠」「ナチュラルカラー」といった曖昧な呼び方をする事で消費者は天然真珠と思い込んでしまっているという事実です。
つまり商用に様々なネーミングをつけて、日本においては明確に表す基準がないため、有耶無耶にしていて、養殖真珠をあたかも天然真珠のように思わせようとしているのというのですから困ったものです。
日本の市場にでている真珠のほとんどが養殖真珠と思って頂いても過言ではございません。なんといっても日本には天然か養殖かをきちんと調べて鑑定書を作成してくれる機関ですらない事からも、養殖技術を成功させた日本の国策? とも思ってしまうほどです。
でもどうして海外は日本と違い、天然か養殖かを明確にしているのでしょうか?
(Sold out 英国の鑑定書がついた
天然真珠リング)
それは簡単にいいますと、ミキモトパールの創業者、御木本幸吉さんが、養殖真珠を宝飾品として取り扱う新たな市場を切り開き、1919 年に世界の天然真珠市 場の中心であった欧州において、彼は養殖真円真珠を初めてロンドンで売り出しました。しかし、養殖真珠の欧州市場への進出は当時の宝石商たちに衝撃を与え、真珠業界を混乱させたのでした。ミキモト真珠は攻撃 の的となり、ミキモト真珠は、本物か偽物か?
詐欺と断定するほどの激しい攻撃はパリに飛 び火し、輸入禁止運動など様々な妨害運動が繰り広げられたのです。
ですから、ヨーロッパでは以後養殖か天然かをきちんと判定する事が大事になったのです。
(店舗にて販売中、初期の養殖真珠)
またアコヤ真珠に関しましても、
アコヤ真珠=日本の真珠と思っていらっしゃる方が多くいるようですが、
アコヤ真珠をつくる母貝であるアコヤ貝は、日本以外にも生息しているのをご存知ですか?
古来からアラビア湾、南インドとセイロン島、ベネズエラは美しいアコヤ真珠の産地として、早くからヨーロッパ人が進出していった地域でした。
世界のアコヤ貝はそれぞれ特徴が異なり、例えばアラビア湾のアコヤ真珠はクリームやピンク色のものが多く、
ベネズエラのアコヤ真珠は透明感が強く、中国や日本のアコヤ真珠は白色や黄色系統のものが多いので、作られる真珠の色や光沢の特徴に差があると言われています。
アコヤ貝は日本の固有種と思われており、そのためアコヤ真珠を生産できるのは、日本だけであるという誤った考えがあるようですが、アコヤ真珠=日本の真珠ではないとう事を頭の片隅に入れておいて下さい。
(ネットストアにて販売中のアコヤ真珠とデマントイドガーネットピアス)
そしてなんといっても私が1番衝撃的だった事は、かれこれ25年程前まで遡りますが、私がCHANELブティックで働いていた頃、多くのお客様が
シャネルのパールアクセサリーを真珠と思って購入されていたという事です。
確かにCHANELですと例えフェイクパールであったとしてもそれなりのお値段ですから勘違いをされている方も多くいるのもわかるのですが、正直びっくりした事を覚えております。
フランスの社交会で時の人となった
シャネルは後に愛人となるイギリスのウェストミンスター公爵と出会い、彼からもらった宝石類から着想を得て、イミテーションジュエリーを発表し、自らもイミテーションや養殖パールをmixして身につけて、ヨーロッパにおける養殖真珠の価値観をくつがえしたのでした。
ある意味CHANELらしい斬新なアイデアですが、イミテーションはどうでしょう??と個人的には思ってしまいます。
そして今ではイミテーションパールには"プラスチックパール" "ガラスパール" "貝パール" "コットンパール"
とあり、実にややこしいというか紛らわしいですよね。
(店舗にて販売中 ミリアムハスケル
ブローチ)
私が常日頃思う事が一つあります。
その事についてはいつか掘り下げてお話ししたいと思ってますが、
黙っていても美的センスを吸収できて美意識を高める環境をつくる事が手短にできるのがジュエリーだと思います。
親が子供に継承していくことは
生きていくためのお金の知識や仕事のスキルや一般教育ももちろんですが、
品格や美的センス、美意識という物は突然つくれるものではないと思うのです。
自分が身に着けているジュエリーのセンスが欠けていたり、本物志向でない イミテーションばかり身に着けていたのでは子供に美的センスをしっかりとは継承できない、ということです。
もちろんジュエリーに限った事ではありません。
財産目的で金庫に立派な宝石をしまいこんでいる人より、
宝石をこなれて 日々のスタイルに取り入れている人の方が
圧倒的に魅力的 であると思います。
特にお子様をお持ちの方は子供にとって身近なロールモデルなのです。
私のブログを読んで下さっている方は勿論美的センスのある方々ですから特に心掛ける事もないと思いますが、
是非その事を周りの方々ともシェアをして欲しいと思います。
話がパールからそれてしまいましたね。汗
数千年前からありとあらゆる権力者に愛されてきた真珠。
母なる海という大自然の恵みから一粒の天然真珠を採取する事がいかに大変な事だったか。
正に美しい奇跡の宝物だと感じます。
最後までお読み下さった皆様ありがとうございます。^ - ^